先日、友人を訪ねて岐阜に行きました。待ち合わせの時間まで少し時間があったので古い和傘の店があったので入ってみると、「いらっしゃいませ」と元気な声で店の主人が迎えてくれました。
和傘作りは江戸時代から続く技術で、明治時代まではどこの町にも必ず1人や2人職人(注)がいたそうです。しかし、日本に西洋文化が入ってくると、今私たちが日頃使っているような、作るのも簡単で値段も安い洋傘がいっきに全国に広まりました。
今年の79歳になる主人の加藤さんはいま、各県に1人か2人いるかいないかという和傘職人(注)の1人です。和傘づくりをやめようと思ったことがありま す。そんなある日、たまたま店の前を通りかかった外国のお客さんが「和傘は日本人の性格をとてもよくあらわしているね」と言ったのを聞いて、(1)「ああ、やめちゃだめだ」と、考え直したそうです。
加藤さんは、「まだまだ元気だから、あと10年は大丈夫。」と笑顔を見せてくれましたが、わたしはとてもさびしい気持ちになりました。
(注)職人:身につけた技術によって物を作り出したりする職業の人。
フランスのパリでは犬を飼っている人が多いが、散歩につれていく犬がアパートの玄関を出たところでフンをしても、それをかたづける人はだれもいないと、パ リに長く住んでいる日本人が書いています。東京の住宅地を歩いていると、私がよく見る犬の散歩には、わりばし注1と紙袋を持っている人が多いので、フンで 道路を汚すことを悪いと考えている人は[1]日本のほうが多いのではないかと思います。フランスでは犬を散歩させる人がフンをかたづけるのは、掃除をする人の仕事をとってしまうのだというのが[2]ふつうの考えのように思えるからです。
しかし、その考えはおかしいと思います。町の中で犬をつれて歩くには、町の美しさを守るという気持ちが必要なのではないでしょうか。なぜかそう思ったかと いうと、「パリの歩道には犬のフンがとても多く、それをかたづけるためには年間7000万フラン注2(約12億円)かかる」という新聞記事を読んだからで す。そのお金はだれが出しているのでしょうか。
(注1)わりばし:使うときに二つに割るはし。 (注2)フラン:フランス・ベルギーなどの旧通貨単位。