A

日本では周囲と協調するように教育され、年長者に対して従順(じゅうじゅん)に、調和状態を壊さないようにする。しかし実際は、人間は独自の感覚や 思考を持つのが当然で、他者と考え方が異なるのは自然なことなのである。これを無理に押さえつけようとすると、心理状態が正常に保てない場合がある、。考 えの異なる他人と上手に意見交換するということは、重要なことなのだ。この技術は、訓練されずには得られないものである。そこで私は、日本の学校教育で ディベートを取り入れることを提案したい。自分の意見をきちんと相手に伝え、反論を聞き、整理し、ポイントを見つけ、さらに説得していく過程で、参加者は 意見交換の重要なテクニックを学ぶ。また、感情的にならず冷静な態度を保ち続ける訓練も、ディベートを通してできるはずである。

B

ディベートが基本的に勝ち負けを決めるタイプの討論であることを考えると、日本の学校教育で採用することには疑問を感じている。自分の意見を述べた り相手の意見を聞いたりするという行動は言うまでもなく重要であり、その資質を養う必要があるが、その方法としてのディベートには無理がある。なぜなら、 日本社会の根底に、人は他者の気持ちを考えるべきだ、争いは避けるべきだ、という考えがあり、争って勝ち負けを決めるタイプのディベートはそれと矛盾して いるからである。議論で勝負するのではなく、互いの意見を認め合いながら弱点を補ったり譲り合ったりしながら、協力して新しい考え方をつくっていくブレー ン・ストーミングのような討論のほうが適当であると思う。

1. A、Bが共通して言っていることは何か。




2. 二つの意見を正しく説明しているのはどれか。




人間には四種類ある。過去の思い出に生きる人、未来に生きる人、現在に生きる人、その他だ。
わたしは「あのときこう言い返せばよかった」とよく後悔するから過去に生きているのかとも思うが、過去の思い出にひたることはないし、「思い出づくり」に も興味がない。過去の栄光も意識に上らない(過去の栄光がないかもしれない)。第一、過去に目を向けることがない。人に自慢しようとして、自慢できるとこ ろが現在の自分に見当たらず、過去の中に無理やり探すときぐらいだ。___1___ 、つらい出来事はずっと尾を引く。先日、失意の底に沈んだときは、立 て直るのに二日かかった。たぶん過去のことは二日経つと他人事に思えるのだ。

未来はどうか。わたしはよく、流暢に話せないのではないかなどと未来に不安を抱くし、食事でも、好きな物が最後に残るよう計画的に食べるから、未来 に生きていそうだが、そうとも思えない。たとえば、未来のために健康診断を受けたほうがいいと思うが、検査は極力避けている。仕事も、今日できることを一 日延ばしにして、結局、約束が守れず謝罪する。計画は立てるが、計画性がないのだ。万事、行き当たりばったりだ。

学生時代、進路を哲学に変えたときもそうだった。当時は就職難で、大学院に行くと就職はまず無理だったが、決断には何の迷いもなかった。親から、哲 学に進むなら仕送りをやめると脅されても、生活のあてもないまま、まったく動じなかった。わたしが楽天的だからではない。たんに先のことが他人事としか思 えないのだ。

自分の未来は一日で十分だ。わたしは人生が何百年もあればいいのにと願っているが、人生のうち、___2___ 人生だと思っているのは今日一日と過去二日と未来一日の余計四日日間だけだ。

3. ___1___ に入る最も適当な言葉はどれか。




4. 「万事、行き当たりばったりだ」とは、どういう意味か。




5. ___2___ に入る最も適切な言葉はどれか。




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