農業は気候の影響を直接受けやすい。そのため地球温暖化は人口増「…1…」世界の食糧不足をさらに加速させる要因になると心配されている。食糧自給率が約4割「…2…」日本でとりわけ深刻で、農家物への影響調査や、自給率向上に向けて研究が急ピッチで進められている。
農林水産省によると、イネは穂が出てから収穫までの期間、平均気温が27度を超えると粒が乳白色化したり細くなったりする「白未熟粒」が多発し、品 質が低下する。また、2030年代には、平均気温上昇「…3…」日本全体で水田からの水の蒸発量が約20%増え、特に九州では広域で水不足に陥ると予測さ れる。トマトやキャベツなどの野菜類も高温になると、実がつかなかったり腐ったりする割合が高まる。植え替えが困難で気候への適応力も弱い果樹類は特に大 きな打撃を受け、収穫量の急減が懸念されている。
問題は気温だけではない。温暖化すると異常気象による洪水や干ばつが増え、台風の勢力も強まる「…4…」。国内では越冬できなかった害虫が生き残っ て増殖し、南方からの新たな害虫の侵入も予想される。このため、作物を高温や風水害に強くする品種改良や、栽培方法の変更、害虫の防除技術を高めるなどの 対策が進められている。
野生植物への影響も無視できない。これまでの研究では、植物の分布域は、気温に合わせて北上したり南下したりするが、その移動速度は年間 50~500メートル。しかし、今世紀末までに気温が3~4度上昇した場合、気温の等温線は、年に約5キロの速さで北上するとされ、植物は気温の変化に追 いつけなくなる。
特に高山植物などは早い値段で行き場を失い、絶滅の危機にさらされてしまう。多様な野生植物があることは、様々な書類の動物の存在も支えている。その多様性が失われれば、生態系全体が崩壊するおそれがあり、植物に応じた様々な保護が必要になるなど課題は山積している。
林陽生・筑波大生命環境科学研究科教授は「温暖化を見越した農作物の品種改良は進んでいるが、天候不順になっ「…5…」冷害が発生するなど問題は簡単ではない。温暖化の影響は複雑なため、技術でカバーできない面は政策面も含めて検討する必要がある」と話す。