一時は観光と買い物と ( 1 )集中していた外国旅行ツアーも近頃はもっと細かくなって、音楽を聴く旅、城をまわる旅というようにある趣味の目的を持つ旅行計画もできてきた。これまた結構(けっこう)なことだと思う。しかし、貴重な金を使って折角(せっかく)の外国に行くなら、( 2 ) 旅行があっていいと思う。

  私は外国旅行をするたび、( 3 )専門の勉強をしている日本人の若い学者に会うと、思いがけない収穫(しゅうかく)をえる。その国の美術なら美術、歴史なら歴史を研究している留学生に話を聞き、実際に彼の指示に従って現地を歩くと、その旅行は大学に一年以上、通ったような利益(りえき)あある。そこで私はいつも考えるのだが、各国にある日本大使館は日本人旅行者のため、( 4 )を現地で開いてくれないだろうか。日本人旅行者なら誰でも聴講(ちょうこう)できる講座(こうざ)(*1)がその国にあれば我々はそれによって、どんなにその国をよく知ることができるかわからない。( 5 )、それはかの地(*2)で勉強している研究家や留学生のアルバイトにもなるのである。

                                                                                             (遠藤周作「ほんとうの私を求めて」集英社)

(*1)聴講(ちょうこう)できる講座(こうざ):参加できる勉強会

(*2)かの地:その場所

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   外国の町についても同様である。ぼくはいろいろな町へ行ったが、滞在(たいざい)がいちばん長かったのは一といってもせいぜい一年足らずであるが一パリである。( 1 )、短期間滞在したほかの町よりも、パリについては知らないのだ。何もあわてること ( 2 )ない、そのうちに行けるだろう、などと思ってるうちに、ついに行かずじまいになってしまった場所がたくさんあるのだ。

  これはおそらく、( 3 )。新聞の常駐特派員(じょうちゅうとくはいん)(*1)として長くその町に住んでいる支局長などと話をしてみると、たいていそうである。パリに五年も住んでいて、エッフェル塔(*2)に一度ものぼったことがない、という友人もいた。東京に五十年も ( 4 )、泉岳寺(せんがくじ)(*3)にも行ったことがないのと同列である。まあ、そんなもんではなかろうか。つもり、つい安心してしまうわけである。だから、( 5 )、ということは、けっしん行けない、ということなのだ。             

                                                                                                                                                                               (森本哲郎「私のいる文章」新湖社)

(*1)常駐特派員(じょうちゅうとくはいん):いつも外国にいてニュースなどを取材する人

(*2)エッフェル塔:パリの有名な建築もの

(*3)泉岳寺(せんがくじ):東京にあるとき

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これまで、私は動物の親と人間の親について書いて来た。動物的には、親は役割だが、人間社会では関係でもあるといった。

  だが、この役割と関係のちがいを、ほとんどの人たちは、はっきりと区別することなしに生活している。( 1 )、それは重なりあっているところもある、親の役割も、社会のなかで行われているのだから、そうならざるをえない。

  だが親子を考える( 2 )、この二つのそれぞれを切り離して、とりだしてみる必要がある。

  動物でも、社会を作っているものがあるから、社会のなかで、固体と固体のあいだの関係はある。だが関係は、役割( 3 )、はっきり区別されている。たとえば、動物のなかでも一夫一婦制をまもるものもある。この関係は一生続くことも、(まれ)ではない。しかし、そうした動物でも、親子の関係は、子が育ち一人前になり、( 4 )。親子のつながりは、一つの季節以上に続かないものが大部分だ。同じ群(*1)のなかで生活していても、子供がすっかり一人前になってしまったあとは、もう親子のつながりはひとかけら(*2)意識されていない。人間は、自分たちの親子関係意識( 5 )動物の親子を見るから、役割を見おとしてしまう。

                                                                                                                                                       (なだいなだ「親子って何だろう」築撃書房)

(*1)(むれ):動物の集団

(*2)ひとかけらも:少しも

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